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プロローグ:「今日、オレは“ポイント”で生き延びた」
2025年4月、東京都内のカフェ。
紙袋の中には、昨晩PayPayモールで“全額ポイント支払い”したチョコレートバーが2本。
財布の中には、現金もカードもない。
あるのは——19,820ポイント。それが、彼の全財産。
彼の名は、タカシ(仮名・34歳)。
職なし、貯金なし、家族との連絡も絶って3年。
それでも、彼は生きている。「PayPayポイント」で——。
第1章:キャッシュレスの楽園が生んだ“サバイバー”
「現金がいらない時代」
それは便利さの象徴であると同時に、ある種の“逃げ道”でもあった。
クレジットカード、QRコード決済、ポイント還元。
この国は、目に見えない通貨で回るようになった。
タカシはある日、こう思った。
「このまま、“ポイント”だけで生活できるんじゃないか?」
最初は冗談だった。
だが、Amazonギフト券をPayPayで買い、そこから食料品、日用品、そして“電気代”まで——
“なんとなく”生きられてしまった。
第2章:ポイ活沼の始まり
はじまりは2021年。
仕事を辞め、心を病み、ネットサーフィンばかりしていたタカシがハマったのは“ポイ活”だった。
- コンビニでPayPayボーナス運用
- ウェル活で1.5倍のポイント還元
- ミッションでポイントゲット
- 不用品をメルカリ出品しPayPay受け取り
「働かずにポイントが増える」
その快感は、ギャンブルに近かった。
第3章:ポイント経済圏で生きるということ
人は「現金がない」ことを恐れる。
だが、タカシにとっての通貨は“ポイント”だった。
- PayPayポイント:メインの通貨
- Tポイント:ヤフー経由で補助的に
- 楽天ポイント:一時期は“外貨”扱い
- au PAYポイント:近所のローソン専用通貨
ポイントは、地域通貨のように使い分ける。
スマホひとつで複数の“財布”を操るその姿は、まるで金融トレーダーのようだった。
第4章:PayPayポイントで暮らす1週間
月曜日:
- 朝:ポイントで買ったインスタント味噌汁
- 昼:吉野家で「牛丼並・PayPay支払い」
- 夜:ネットスーパーで米と納豆を注文
火曜日:
- ポイントバック5%キャンペーンを狙い、無印良品で日用品購入
- メルカリで使わない本を出品→売上PayPay受け取り
- 楽天ポイント→PayPayポイント交換チャレンジ(失敗)
水〜金曜日:
キャンペーンのルールを読み込み、還元率を最大化。
“ポイント錬金術”に近い技術が必要だった。
第5章:ポイントだけで「人」として生きていけるのか?
タカシは言う。
「ポイントがある限り、オレは死なない。でも、“生きてる”とは言えない気もする」
人と会うことはほとんどない。
仕事もない。
あるのは、スマホとアプリと、還元率の良し悪しだけ。
「人間らしさ」とは何か?
現金主義の母親は彼にこう言った。
「あんた、ポイントで命つないで恥ずかしくないの?」
でも、彼は反論する。
「今どき、誰だってポイントもらって生きてるよ。
現金主義の方が、もう古いのかもよ?」
第6章:「社会に属さない」という自由と孤独
タカシの生活は、どこかホームレスに似ている。
けれど、彼はアスファルトの上にはいない。
“デジタルの街角”で、生き延びている。
- 定住地なし
- 固定収入なし
- 職場なし
- でも、スマホとネットとポイントがある
社会から見たら“消えた人間”。
でも、彼はここにいる。PayPayアプリの中に。
第7章:「自立」とは何か?本当の幸せとは?
“自立”とは、誰にも頼らず自分の力で生きること。
そう習った。でも、タカシはこう語る。
「PayPayポイントがあるから、生きてる。でも、これが“自立”なのかは、わからない」
自給自足のようでいて、依存している。
現金経済を否定しているようでいて、クレジットに依存している。
「令和の闇」とは、表面化しない依存のことなのかもしれない。
第8章:ポイントで救われた命、そして未来へ
精神を病んだとき、彼を救ったのは**“誰かの言葉”でも、“家族の支え”でもなかった**。
それは、「PayPayポイントの残高」だった。
「明日も、これがあれば食べられる」
その一点だけが、彼を孤独と絶望から引き離してくれた。
だからこそ、彼は今日もPayPayアプリを開く。
還元率を見つめながら、誰にも見えない生を、確かに生きている。
エピローグ:「ポイントでしか、生きられなかった」
これは一人の男の記録である。
そしてもしかしたら、明日のあなたの物語でもあるかもしれない。
「現金を使わない暮らし」
それは、“選んだ道”ではなかった。
けれど、彼はそれでも生き抜いた。