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◆序章:静かな溝が、ふたりを裂いていく。
夜、ふと気づくと、隣にいるはずの人が遠い。
枕の距離は数十センチなのに、心の距離は見えないほど広がっている。
――これが「セックスレス」という現象の、恐ろしさだ。
「もう、夫婦として終わってるのかな…」
「こんなはずじゃなかった」
「触れられるのが、ちょっと怖い」
そんな声が、SNSや掲示板、夫婦カウンセリングの現場で日々、ささやかれている。
でも、誰もがその「本音」を言えないまま、日常に流されているのが現実だ。
◆第1章:セックスレスとは何か?統計とリアルの狭間で
実は日本は世界一セックスレス国家だと揶揄されることもある。
2018年の日本家族計画協会の調査によると、**既婚者の約半数が「1ヶ月以上性交渉がない」**と回答している。
さらに驚くべきは、その理由。
- 「仕事や育児で疲れている」(男女共通)
- 「相手に魅力を感じなくなった」
- 「性欲がない」
- 「面倒くさい」
- 「拒否されるのが怖い」
これらは全て、感情・生活・文化が複雑に絡み合った結果だ。
つまり、セックスレスは単なる「性の問題」ではなく、夫婦関係の総合的な問題なのだ。
◆第2章:「したい」のに「できない」ジレンマ
セックスレスを巡る問題の核心には、「非対称性」がある。
たとえば、片方が求めているのに、もう片方が拒否する状況。
これは、拒まれた側に強烈なダメージを与える。
- 自尊心が傷つく
- 「愛されていない」と感じる
- 他の誰かに逃げたくなる(=浮気の温床)
一方で、拒否する側も罪悪感にさいなまれていることが多い。
「本当は応えたい。でも無理なんだ…」と。
この**“誰も悪くないのに、誰も救われない”**という状況が、セックスレス問題をより深刻にしている。
◆第3章:なぜ、私たちは「性」を語れないのか?
性は、人間の最も本質的な部分だ。
なのに、日本社会では性について「恥ずかしい」「隠すべき」「タブー」という空気が根強い。
学校教育でも、「避妊」や「病気予防」に偏った性教育が多く、「喜び」や「つながり」としての性は語られない。
その結果、大人になっても「性を素直に語ること」にブレーキがかかる。
- パートナーに自分の性欲を伝えられない
- 求めることが「ワガママ」に思える
- 恥をかきたくないから黙ってしまう
この沈黙こそが、夫婦間の距離を決定的なものにしていく。
◆第4章:子どもができた後の“壁”
出産を機に、セックスレスに陥る夫婦は多い。
理由は単純明快だ。
- 妻は出産・授乳・育児で疲弊し、ホルモンバランスも激変
- 夫は“父親”という役割への切り替えに戸惑い、性的な気持ちがわかなくなる
- 赤ちゃん中心の生活で、ふたりの時間が消える
これは“自然な流れ”でもある。
でも放っておくと、ふたりの関係は「育児パートナー」から「ルームシェア」に変わってしまう。
◆第5章:解決の鍵は“性”ではなく“会話”にある
実は、セックスレスを解消する一番の鍵は「性技術」ではなく、「会話力」だ。
ポイントは以下の3つ:
1. 恥を手放す
まずは「性を語る自分」を許すこと。
恥ずかしさの壁を壊す勇気が、ふたりの距離を縮める第一歩。
2. 責めない会話
「なんでしてくれないの?」ではなく、
「最近寂しいな。もっと近くにいたいな」など、感情を伝える会話を意識する。
3. “性”の再定義
セックス=挿入行為 という固定観念を手放し、「触れ合う」「寄り添う」「愛を確認する」時間として再解釈すること。
◆第6章:夫婦が再び“恋人”に戻るためにできること
▷デートをする
子どもを預けて、月に1回でもいい。
「夫婦」ではなく、「恋人」に戻る時間をつくる。
▷体に触れる習慣
手をつなぐ、ハグをする、頭をなでる――
性的でなくてもいい。“触れる文化”を家庭に取り戻す。
▷新しい体験を共有する
旅行でも、映画でも、新しい趣味でもOK。
“感情を揺さぶる体験”は、ふたりの感度を取り戻すきっかけになる。
◆第7章:セックスレスと向き合う勇気が、人生を変える
最後に、こう問いたい。
「あなたにとって、パートナーとの関係とは何ですか?」
セックスレスは、「愛がない」から起きるとは限らない。
むしろ、「愛しているからこそ、向き合うのが怖い」こともある。
でも――
それでも、話してみよう。
少しずつでも、歩み寄ってみよう。
沈黙ではなく、対話を。
拒絶ではなく、理解を。
無関心ではなく、愛を。
そうしてこそ、
ふたりはもう一度、“はじまり”に立ち返ることができるのだから。
◆終章:セックスレスを語れる社会へ
このテーマは、誰かを責めるためのものではない。
あなたが「今のままでは辛い」と感じるなら、
それは**“変わりたいサイン”**だ。
ブログやSNS、コミュニティなど、あなたの想いを受け止めてくれる場所は、きっとある。
――この記事が、その小さなきっかけになりますように。