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【序章】涙で濡れた答案用紙の向こうに、見えた“もう一つの自分”
小さな受験票を握りしめ、あの日の私には、未来がはっきりと見えていた。
「早稲田アカデミーに合格して、トップクラスに食い込む」
そんな青写真を、少年の私は無邪気に信じていた。
でも、世界はいつだって予想外の方向へ転がっていく。
結果は「不合格」。
夢は、音を立てて崩れた。
その日、私は泣いた。
悔しさではない。恥ずかしさでもない。
ただ、全力を尽くした自分の努力に対して、結果が返ってこなかった“空虚”に、涙したのだ。
【第一章】なぜ子どもたちは“早稲アカ”を目指すのか?
早稲田アカデミー(通称:早稲アカ)は、首都圏を中心に展開する進学塾だ。
その指導力は圧倒的。御三家中学から難関国立、さらには東大・早慶まで合格者数を誇り、教育業界のブランドとも言える存在。
では、なぜそこまでして早稲アカに入るのか?
それは「夢を見る力」が宿っているからだ。
ただの進学塾ではない。子ども一人ひとりに「君ならできる」と言い続けてくれる、その圧倒的なメンタルサポートがある。
しかし、それは同時に「選抜の壁」をも意味する。
入塾テストでは、容赦なくふるいにかけられる。
“落ちる”という体験は、子どもにとっての“初めての敗北”でもあるのだ。
【第二章】試験当日──父と交わした“無言の約束”
テスト当日、父は駅まで送ってくれた。
彼は何も言わなかった。ただ、私の頭をポンと撫でて「頑張れ」と一言。
普段は無口な人だ。だけどその一言に、たくさんの想いが込められていた。
「お前ならいける」「結果がどうであれ、俺は見ている」
そんな心の声が、無言のまま私を押し出してくれた。
緊張で震える手で鉛筆を握り、白い答案用紙に向き合う。
時間との勝負。知識との勝負。
でも何より、自分との勝負だった。
【第三章】試験が終わっても、心は終わらなかった
試験会場を出た瞬間、何かが胸の奥で「終わった」と言った。
自己採点は、ギリギリ……いや、たぶんダメだろう。
けれど、どこかで信じていた。
「もしかしたら受かっているかもしれない」
その“もしかしたら”が、少年の心に灯り続けていた。
【第四章】合格発表──封筒を開いた瞬間、世界が音を立てた
合格通知は、郵送だった。
母が笑顔で「来たよ」と言って手渡してくれた。
私は封を切る前に、深く深呼吸をした。
一瞬、未来が止まる。
そして──
「不合格」
その文字は、黒いインクで、はっきりと書かれていた。
私は、声にならない嗚咽をもらし、リビングの片隅でじっとしていた。
母は何も言わず、そっと横に座ってくれた。
あの沈黙が、何よりの慰めだった。
【第五章】「落ちた」ことを友だちに言えなかった日々
友達の多くは早稲アカに合格していた。
「〇〇中を目指してるんだ」
「先週の授業でこんなことやったよ」
そんな会話が、どこか遠くに聞こえる。
私はうなずくふりをしながら、心の中で壁を作っていた。
「僕は、落ちた」
その一言が言えなかった。
自分の存在が否定されたような気持ち。
でも、誰も私を責めてはいなかった。
責めていたのは、自分自身だった。
【第六章】それでも勉強を続けた理由
不合格になっても、机に向かうことをやめなかった。
なぜなら「勉強=自分を取り戻す行為」だったから。
悔しさをノートにぶつけた。
眠い目をこすりながら、計算問題を何度も解いた。
社会の年号を覚えながら、未来を塗り替えようとした。
勉強は、誰にも奪えない。
結果ではなく、過程が自分を作る。
それを私は、あの日初めて知ったのだった。
【第七章】塾に行けないという選択肢の中で得た“武器”
結果的に、早稲アカには入れなかった。
でも、地元の小さな学習塾で、私は成績を伸ばした。
目立たない場所。誰も注目しない教室。
だけど、そこで出会った先生がいた。
「お前、言葉の使い方が上手いな」
そう言ってくれた国語の先生。
彼は、私の中にある“光”を見つけてくれた。
偏差値や合否だけじゃ測れない“価値”を教えてくれた。
【第八章】そして、再びの挑戦──その時、私は笑っていた
1年後、私は別の模試でトップクラスの成績を取った。
しかも、その模試の主催は──早稲田アカデミーだった。
笑った。
涙じゃなく、心からの笑顔だった。
落ちた場所で、もう一度勝負する勇気。
それを持てた自分を、ようやく誇れた。
【最終章】落ちることは、失敗ではなく“通過点”
受験や入塾テストに落ちると、人は「失敗」と感じるかもしれない。
でも本当は違う。
それは「人生の枝分かれ」だ。
一つのドアが閉じたら、もう一つのドアが開く。
それを選ぶ力が、人間の強さだ。
今、もしあなたや、あなたのお子さんが入塾テストに落ちてしまったのなら──
どうか伝えてほしい。
「人生は、何度でもやり直せる」
「そして、君の価値は“結果”じゃ決まらない」
私は、不合格通知を受け取ったあの日の少年に言いたい。
「君が涙を流した分だけ、未来は君に優しくなる」と。
【あとがき】
このブログが、もし誰か一人でも
「大丈夫」と思えるきっかけになったなら、
それこそが、私の“合格”だと思っています。